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ヘサライトとサファイアクリスタルでは素材の物理的性質が違うのは明らかだが





ヘサライトとサファイアクリスタルでは素材の物理的性質が違うのは明らかだが、そうしたフィジカルな違いの他に、リスペクトというメンタルな部分でも違いが存在する。なぜかというと、月に行ったスピードマスターはすべてヘサライト風防なのだ。危機的な状況に陥ったアポロ13号で14秒間の逆噴射を行うのに、スピードマスターを使って時間を計ったエピソードは有名だが(オメガはこの功績により、NASAから有人宇宙飛行ミッションの成功に大きく貢献した人や団体に贈られる「シルバースヌーピー賞」を受けた)、そのモデルにもヘサライト風防が付いていた。


サファイアクリスタルのシースルーバック。「オメガ スピードマスター キャリバー321 'エド・ホワイト' 」に新採用された.321キャリバーを眺めることができる。スピードマスターでCal.321を搭載したモデルのうち、シースルーバックを採用したのは本機が初となる。

 一方、サファイアクリスタルの風防は現代の腕時計市場において圧倒的に普及しているが、それには理由がある。傷が付きにくく、極めて透明度が高く、ヘサライトであれば痕が残ってしまうような衝撃やへこみにも強い。オメガ時計 メンズ 人気スピードマスターでは、型番BA 345.0802とBA 145.0039で初めてサファイアクリスタルの裏蓋が登場した。これらは限定モデルで、スピードマスターが有人宇宙飛行での使用に適するとNASAから1978年に再認定されたのを記念して発売された。裏蓋ははめ込み式だ。1980年代初頭のドイツ市場でその多くが販売された。

 その後、1985年になり、サファイアクリスタルのシースルーバックを採用した型番ST 345.0808が登場した。このモデルは表の風防にはヘサライトを、裏蓋にはサファイアクリスタルを採用していた。有人宇宙飛行での使用に適するとNASAに認定されてから20年が経過したのを記念して発売された、これもまた限定モデルだった。スピードマスターの標準モデルでサファイアクリスタルの裏蓋を初めて採用した型番は3592.50だ。コレクターにとって垂涎の的となる多くの特徴を備えていた。このモデルは「ヘサライト サンドイッチ」と呼ばれることがある。トリチウムを塗布した文字盤を使っており、時を経ると共にそれがクリーム色を帯びてくる。文字盤はヘサライトの風防に覆われている。2003年、オメガはスピードマスターのコレクターやファンの要望を受け入れる形で、サファイアクリスタルの風防を採用したモデルを発売した。それまではサファイアクリスタルのシースルーバックを採用したモデルが存在していただけだった。しかしついに表側の風防にもボックス型サファイアクリスタルを使ったモデルが登場した。型番は3573.50となる。最近のモデルでは「オメガ スピードマスター キャリバー321 'エド・ホワイト'イン ステンレススティール」も風防と裏蓋の両方にサファイアクリスタルを採用している。

 2種類の風防のうちどちらを選ぶべきか。決めるのは非常に難しい。難しいという点では月に行く難しさも並大抵ではない。ところが、月着陸のミッションは無事に成功している。風防選びの問題も必ずや解決できるはずだ。